13:02

 「死」を忘れるために、遠くを見た。美しい...死ぬ間際の光景はいつも以上に...いやいや、忘れるんだ!

 現国道も見える。あそこでは、こんなところで命を懸けたスタントをかましている馬鹿が居ることなど想像することもなく、平穏な時間が流れていることだろう...ふっとあそこに帰りたくなった...いや、この現状に集中するんだ!と、自分に言い聞かせ、いざ進まん!!!
13:04

 滑る...!やばい...!!!

 やはり、甘いのか!?この無知な俺が乗り越えるレベルじゃないのか!?
 しかし、命を懸けた時、人は強くなれる。片手でチャリを担ぎ、残った手で、斜面を掘る。そのわずかな窪みに片足を引っかけ、もう片足でさらに深く掘る。この繰り返し。異常なほど慎重に進んだ。一歩ごとに神経を磨り減らす。ざっく...ざっく...峠に木霊しただろうか...

 ざっく...ざっく..

     ざっく...ざっく...

 そして....ついに、抜けた!れきの大きな後半の箇所へ!!!もう、ここまで来れば...


 右の写真は、命を懸けたその足跡である。
13:10

 ついに生還!!!!!!!!!!!!

 涙が出そうなほどホッとした。生きていることに感謝した。
 そして、終わって初めて己の甘さを悔やんだ...やり遂げたはずなのに...虚しさが残った...
13:12

 崩落を暫し傍観...

 自然の恐ろしさがひしひしと伝わってくる。そして、近づくべき場所ではなかったと痛感する...

 もう、二度と来ない、そう誓った。
                (遅いっ!!)