15:08

 ひょい。

 道(?)は沢の向こうに続く。
 チャリを担いで、対岸へ。

 ってか、道が沢をまたぐ訳がない...
 この時点で異常に気づくはずなのに、なぜか先にあるであろう道を信じてしまう。
 いや、信じていなければ、この状況をやりきれないような気がしていた...


 後ろの同伴者は、どんな気持ちでこちらを見ていたのだろう!?

 
15:11

 そして、見えない道へ消えてゆく。

 チャリはもう、快適な乗り物ではなくなっている。
 藪を踏みつけるローラーのようなもの。

 もうやけっぱち!
 突撃だ〜!!

 ついて来やがれっ!
 これが山チャリだ!!!!
15:24

 んん?
 沢との高度差がいつの間にかこんなにも...

 でも、先には道どころか、足場さえなく...

 なら...下るか...
 10mはあるかな...俺史上最高の落差。
15:32

 三人で協力して下りましたよ!

 一人が先に下り、上の人がチャリを慎重に降ろし、下の人が受け取る。

 一人でチャリを持って下るには不可能な斜度だったし...

 同伴者がいて良かったなぁ!
15:38

 俺が偵察部隊となり、先の道(のような部分)を探す。

 行けそうならチャリを担いで、先を目指す。
 もうチャリは完全にお荷物である。

 しかし、置いていくわけにはいかない。
 それは、負けを意味する。

 ってか、負けてるよね。自分の勘の悪さに...

 ごめんね!皆着いてきて!
15:44

 途中、日本庭園のような苔むした渓流に出会う。
 今の状況からのエスケープ。
 妙な恍惚感というのか、心が洗われた(^^;)

 さぁ、先に進む...と言えども道はない。
 完全に遭難だよ、こりゃ...
 新聞の見出しが頭をよぎる。

 「チャリで沢下り!?無茶な三十路と被害者二人が、沢に沈む...」
15:58

 途中、2mの高さはあるであろう滝に出くわす!

 それでも降りましたよ!チャリを担いで...
 もう必死!
 何度も足を滑らせ、もう靴はぐちゃぐちゃ...
 もうこのころから沢に入ることに抵抗がなくなっていた...
 他の二人も生きて帰ることを最低限の目標とし、濡れることを気にする余裕も消えたようだ...

 ごめんね。俺が追いつめた?
16:14

 道がないか崖の上を見渡す...

 どこかで道を間違え、本当の道は、すぐ隣を走っているのでは?
 と言った、一縷の望みに奇跡を夢見る...

 でも、当然ありません...
 さっ、また沢を歩くか...


 注:「沢をわたるか」ではありません。
16:27

 少し沢から離れ、林間に進路を移す。

 山菜採りの方だろうか!?
 わずかだが踏跡がある。

 少しだけ望みが持てたような気がする。
 これでもだ。
16:32

 まだチャリは押すだけ...

 本当にごめんね。
 気持ちよくツーリングするはずが、チャリは押すだけ、足は濡れるだけ...

 俺は何をやっているのだろう...

 彷徨いながら、そんな懺悔を心にとどめる...